IRS Direct Fileの誕生と終焉を報告
原題: The Life and Death of Direct File [pdf]
なぜ重要か
政府主導の無料税務申告サービスの廃止は、行政デジタル化と民間業界の利害対立という普遍的な課題を示す事例として注目される。
カリフォルニア大学バークレー校情報大学院が、米国内国歳入庁(IRS)の無料税務申告サービス「Direct File」の設立から廃止までの経緯をまとめた報告書を公開した。同サービスは納税者が政府のシステムに直接申告できる仕組みとして導入されたが、政治的・制度的背景のもとで廃止に至った。
カリフォルニア大学バークレー校情報大学院は、米国内国歳入庁(IRS)が運営していた無料オンライン税務申告サービス「Direct File」の歴史を分析した報告書を公開した。
Direct Fileは、納税者がTurboTaxなどの民間サービスを経由せずに、政府のシステムへ直接・無料で確定申告を行える仕組みとして設立された。2022年に成立した「インフレ削減法(Inflation Reduction Act)」に盛り込まれた予算措置を背景にIRSが開発を進め、2024年の申告シーズンに試験的な本格運用を開始した。
しかし、民間の税務申告業界からの強い反発、議会における政治的対立、さらに連邦政府の支出削減を推進する動きが重なり、同サービスは存続の危機に直面した。2025年にトランプ政権下でのDOGE(政府効率化部門)主導の予算・人員削減が進む中、Direct Fileは事実上廃止の方向へと向かったとされる。
報告書は、同サービスの設計・構築・展開における意思決定の経緯や、関係機関・ステークホルダーの役割を詳細に記録している。公共サービスとしてのデジタル行政の在り方や、民間業界と政府の利害対立という構造的な問題についても考察が加えられている。
報告書の著者はバークレー校情報大学院のVinton氏とされており、行政デジタル化の事例研究として位置づけられている。