脳内の複雑な波が認知機能を制御
原題: Surprisingly complex waves reveal the brain's inner workings
なぜ重要か
脳波の役割が「副産物」から「情報処理の主役」へと再定義されれば、AIのアーキテクチャ設計や脳疾患の治療戦略にも波及する可能性がある。
2026年9月30日、Quanta Magazineが報じた最新神経科学研究によると、脳の皮質を伝播する「移動波」が従来の理解をはるかに超えた複雑な構造を持つことが判明した。2026年4月にNature Communicationsに掲載された研究では、発散する「ソース波」、収束する「シンク波」、渦状の「スパイラル波」など多様なパターンが観測され、行動課題ごとに異なる波形が対応することが確認された。
脳は全エネルギーの約半分を、ニューロンを発火直前の状態に保つ電気化学的勾配の維持に費やしている。この仕組みが、日常生活の多様な要求に対応するための高い柔軟性を支えている。
これまで神経科学者は、多数のニューロンの集合的な電気活動として生じる「移動波」を、単純な平面波として記録し、「脳が動いているサインに過ぎない」と解釈してきた。しかし、人間と動物を対象とした新たな研究群は、その見方を大きく変えつつある。
シカゴ大学のJoshua JacobsとAnup Dasらのチームは、頭蓋内電極を用いて移動波を詳細に計測。ある地点から外側に広がる「ソース波」、一点に収束する「シンク波」、そして渦巻き状の「スパイラル波」という3種類の複雑な波パターンを観察した。さらに、特定の行動課題と特定の波パターンとの間に対応関係があることを突き止めた。
ニューロン同士のシナプス結合が変化するには通常、数日から数ヶ月を要する。一方、行動への適応は数秒で起きる。この時間的ギャップを埋める機構として、大規模な波パターンが皮質の活動をリアルタイムで再編成している可能性が浮上している。
MITの認知神経科学者Earl K. Millerは、「この分野の研究は『移動波は関係あるのか?』という問いから、『皮質が情報を処理する主要な様式の一つだ』という段階へ移行しつつある」と述べ、その重要性を強調した。移動波の研究は、脳が瞬時に環境に適応するメカニズムの解明に向けて、大きく前進しようとしている。