AI競争がVCの「競合投資禁止」慣行を侵食

原題: Even Benchmark thinks AI is eroding the venture pact against backing rivals

なぜ重要か

AI投資の過熱がVC業界の利益相反管理を構造的に変えており、創業者が受けるガバナンス保護の質が問われ始めている。

2026年10月13日〜15日開催のTechCrunch Disruptにて、老舗VCのBenchmarkのパートナー陣が、AI投資ブームによって「競合他社への同時投資禁止」という業界の不文律が事実上崩れつつあると認めた。OpenAIとAnthropicには既に数十社の共通投資家が存在し、Factory対Cognitionの騒動など具体的な摩擦も表面化している。

数十年にわたり、VCの世界では「正面から競合する2社に同時出資しない」という不文律が守られてきた。しかしBenchmarkのパートナーたちは、AIブームがその慣行を限界まで追い詰めていることを公の場で認めた。

背景にあるのは二つの動きだ。第一に、OpenAIとAnthropicはすでに数十社もの共通投資家を抱えており、慣行はすでに形骸化しつつある。第二に、9月末には具体的なスキャンダルが勃発した。AIコーディングエージェントを手がけるスタートアップFactoryが、取締役オブザーバー兼アドバイザーのChris Degnanを「ライバルであるCognitionに関わる非倫理的行為」を理由に解任。FactoryのCEOは、Degnanが取締役会レベルの情報を得ながらCognitionへの転職交渉をしていたと主張した。Degnanは情報漏洩を否定したうえで、すでに辞表を提出済みだったと反論。その後まもなくCognitionのCRO就任を発表した。Khosla Venturesは両社に出資しており、Vinod KhoslaはX上でFactoryのCEOを批判し「低迷する二番手競合企業」と切り捨てた。

BenchmarkのEric Vishria氏は「あらゆる企業が猛スピードで変化している。コンフリクトは現実のものだ」と発言。同社が各創業者との守秘義務を守り続けていると強調しつつ、「VCはプロダクトや技術の専門家ではない」と情報漏洩リスクを低く見積もった。一方でChetan Puttagunta氏は「ソフトウェア開発コストが事実上ゼロに近づいた結果、創業者の野心は際限なく膨らんでいる。各社が広範な領域を取り込もうとするため、ポートフォリオ企業同士がぶつかるケースは今後さらに増えるだろう」と指摘した。Peter Fenton氏はこの問題を「キプトナイト」と表現し、Benchmarkにとって最難問だと認めた。

三者ともに「最初から競合するスタートアップへの同時出資は論外」との立場は崩さないが、既存ポートフォリオ企業が時間をかけて互いの領域に踏み込む状況については、「避けられない現実」として事実上の容認姿勢を示した形だ。

出典

techcrunch.com — 元記事を読む →