卓上核融合装置を密かに開発するスタートアップ
原題: Cambridge Heavy Industries has been quietly building a desktop fusion device
なぜ重要か
レーザー本数を削減した小型慣性閉じ込め方式が実証されれば、核融合発電のコストと開発期間を大幅に短縮できる可能性がある。
米マサチューセッツ州ケンブリッジのスタートアップ「Cambridge Heavy Industries」が、MIT近くのラボで卓上サイズの核融合装置を極秘開発していたことが明らかになった。同社は2026年10月、Azolla Venturesが主導する620万ドルのシードラウンドを調達。1日50〜80回の実験を可能にする小型モジュール設計を採用し、AIシミュレーションと組み合わせて設計を最適化している。
核融合といえば巨大レーザーや超電導磁石を備えた巨大施設が定番だが、Cambridge Heavy Industriesが開発するのは文字通り机の上に置けるサイズだ。共同創業者兼CEOのYun Kai氏がTechCrunchに独占公開した。
同社の装置はレーザーで燃料ターゲットを圧縮する「慣性閉じ込め方式」を採用。2021年に米国立点火施設(NIF)が証明したエネルギー収支プラスの核融合と基本原理は共通するが、必要なレーザーの本数を大幅に絞った点が独自性だ。1本のレーザーを複数ビームに分岐して同心円状に照射し、外側から順番にターゲットを圧縮することで衝撃波を増幅する。最終的に別のレーザーが中心部で熱と磁場を発生させ、高圧・高熱の条件で核融合を起こす仕組みだ。
このアイデアはMITの化学者Keith Nelson教授の研究室から生まれた。同ラボでは極限環境下での材料挙動をレーザーで研究しており、圧力を高めていく過程で核融合に必要な条件に近づくことに気づいたという。
小型化の利点は速度だ。Kai氏は「小さいからこそ1日50〜80回の実験が回せる」と話す。得られたデータをAIシミュレーションに投入してループを回すことで、設計の改良を加速させている。
今回の620万ドルシードラウンドにはAzolla Venturesのほか、Overlay、Neta Foundation、P3A、MassCEC、Rothrock familyが参加。約10年後には2面分のバスケットコートほどのサイズに拡張した実証プラントを建設し、商用発電の可能性を検証する計画だ。現行の卓上プロトタイプはあくまでその第一歩に位置づけられている。