AIが数学の次に科学全体を席巻か

原題: AI Came for Math. Now It’s Chasing the Rest of Science

なぜ重要か

AIが理論科学分野の問題を自力で解く能力が2年で急伸しており、学術研究の方法論と評価基準の根本的な見直しが迫られている。

MITのNeil Thompson研究員が2026年10月、最新研究を発表。2024年中頃から2026年中頃にかけて、最先端AIモデルが確率論・統計理論・経済理論・高エネルギー物理・重力・宇宙論・量子物理学の理論問題を正答できる割合が約2%から約35%へと急伸したと報告した。

MITのNeil Thompson氏は、Gabriel Manso氏(博士課程)とClaudio Mayrink Verdun氏(研究科学者)とともに行った研究で、AIが数学以外の理論科学分野へも急速に進出していることを示した。

研究チームは、2025年12月から2026年5月にかけてオンラインに投稿された研究論文から問題を抽出し、OpenAIのo1・o3・GPT-5・GPT-5.1・GPT-5.4・GPT-5.5の各モデルが解けるかをテスト。重要なのは、これらの問題の解答が各モデルの学習データ締め切り後に公開されており、モデルは「既習の答え」ではなく自力で推論する必要があったという点だ。また、インターネットへのアクセスも遮断し、解答の検索ができない条件下で実施した。

対象分野は、シミュレーションや実験なしに推論できる理論系に限定されているものの、Thompson氏は「数年以内に、理論的な問いの多くがAIによって完全に様変わりするだろう」と述べた。

数学分野では、2026年9月にOpenAIが流体運動を記述するNavier-Stokes方程式に関する長年の未解決問題をAIが解いたと発表し、業界に衝撃が走った。さらに、NYU所属の数学者がAnthropicと関係するある研究者と共同で同問題に取り組んでいたところ、OpenAIにその成果を先取りされたと主張し、論争が起きた。これ以降、OpenAIらは数百もの未解決数学問題の解決を相次いで発表。一部の数学者はAI利用に制限を求める声明を出し、「問題を解くプロセス自体が、最終的な答えと同等の価値を持つ」と警鐘を鳴らしている。

Thompson氏は、数学での混乱と同様、他の理論科学分野でも正負両面の影響が生じると予測。理論的な進歩が実用的な科学の前進につながる可能性がある一方、研究プロセスそのものの価値が問い直されることになると指摘している。

出典

wired.com — 元記事を読む →