360Mパラメータで端末を丸ごとシミュレート
原題: WorldTUI: I trained a 360M model to pretend to be a terminal
なぜ重要か
シェル不要で端末を学習するアプローチは、OSレスなインタフェース設計の実験的先例として今後の研究に影響しうる。
個人開発者のSimon Edwardsson氏は2026年10月21日、360Mパラメータの言語モデルを使い、実際のシェルやファイルシステムを持たずにターミナルの動作を再現する「WorldTUI」を公開した。Qwen2.5-Coder-0.5Bをベースに、Dockerで録画したターミナルセッションでファインチューニング。WebGPU対応のブラウザ上(208MB)で動作し、vim・tmux・スネークゲームまで動く。
Simon Edwardsson氏が個人プロジェクトとして開発した「WorldTUI」は、バックエンドに本物のシェルを持たないターミナルシミュレータだ。キーボード入力を受け取るたびにモデルが画面の差分を予測し、ユーザーには本物のターミナルに見える出力を返す。
技術的な出発点はGoogle DeepMindのGenie 3に触発されたゲーム世界モデルの概念。「GPUクラスタも大量の映像データもない」という制約から、ゲーム画面ではなくターミナル(文字グリッド)に絞り込んだ。文字グリッドなら学習データをDockerコンテナ内の実プログラムで無制限に生成でき、既存のコード特化LLMがlsやcatの出力を既知として扱える点も有利だった。
ベースモデルはQwen2.5-Coder-0.5B(約5億パラメータ)で、ファインチューニング後は360Mパラメータ相当に収まっている。入力トークン列には画面スナップショット・カーソル位置・生のキーバイト列・WAITトークン(経過時間)が含まれ、モデルは「どの行をどう書き換えるか」と「カーソルの新しい位置」を出力する。ESCキーやESC[Dのようなエスケープシーケンスもそのまま扱う。
重要な工夫が二つある。一つは「自己修正」機能で、モデルが誤った出力を生成した場合に自動で訂正するループを組み込んだ。もう一つは画面行の並列デコードで、これが推論速度を大きく改善した。
デモはWebGPU対応のChrome/Edgeで動作し、ファイル作成・vim操作・tmux分割・スネークゲームのプレイが確認されている。「pythoon」と入力すると本物のシェルではないことがすぐ分かると氏は述べており、数コマンド前の状態を「大体」記憶する程度の一貫性は持つという。