コロナ後IT不況が億万長者をTrumpに向かわせた理由
原題: Why the Postpandemic Tech Bust Sent Billionaires to Trump
なぜ重要か
テック業界の政治的再編は規制・税制・AI政策の方向性に直結し、業界全体の事業環境を大きく左右する。
2022〜2023年の大規模レイオフを経て、多くのテック企業従業員が雇用主に反発した。Wiredに掲載された書籍抜粋によると、同時期にリベラル系政治家もSilicon Valleyへの批判を強めたことで、テック億万長者たちはDonald Trumpへの接近を選択。パンデミック時の過剰採用と急速な金融引き締めが引き金となった構造的転換を詳述している。
パンデミック初期、Zoom・Slack・Microsoft Teamsなどのプラットフォームは需要が急増し、テック業界は米国経済の根幹インフラとなった。Amazon・Metaはそれぞれ従業員数を約92〜93%増加させ、MicrosoftとGoogleもそれぞれ8万人・6万人規模の大量採用を実施した。しかし実態は、採用された多くの従業員が即時の業務を持たず、将来の未定プロジェクトのために「待機要員」として雇われた状態だった。
こうした過剰採用を支えたのが、2008年の金融危機以降続いた「ゼロ金利政策(ZIRP)」だ。低コストの借入資金が潤沢に供給された結果、ベンチャー資本は膨張し、テック企業は積極的に拡大。給与水準の高騰・高い転職自由度・リモートワーク交渉力など、テック労働者は史上最強の地位を享受した。
転機はインフレの到来だった。パンデミック期の大規模財政出動が消費者にキャッシュを流入させ、米連邦準備制度(Fed)は15か月で10回連続の利上げを断行。政策金利はほぼゼロから約5.5%まで引き上げられた。S&P500は19.4%下落し、2008年以来最大の落ち込みを記録。不動産・小売・エンタメなど幅広いセクターも打撃を受けた。
テック業界では需要の急冷と高金利による資本コスト上昇が重なり、2022〜2023年にかけて大規模なレイオフが相次いだ。かつて「神聖な雇用先」とされたテック大手が従業員を切り捨てたことで、労働者側の不満は高まった。同時期、民主党系政治家もプラットフォーム企業の独占や富の集中を批判する姿勢を強めた。左右両側から圧力を受けた億万長者・テック投資家たちが、規制緩和や法人税引き下げを掲げるTrump陣営へと接近した流れを、本書は構造的に分析している。