英国でPalantir拒否の地域が登場
原題: The Single English County Saying No to Palantir
なぜ重要か
公共医療分野への米国製AIプラットフォーム導入の是非を問うこの事例は、欧州全体のデジタル主権議論に波及しうる先例となる。
英国政府は、NHSとPalantirが締結した4億ドル超の医療データ契約を2027年2月に早期終了するか否かの判断を6か月以内に迫られている。イングランドのグレーター・マンチェスター地区はPalantirのFDP導入を繰り返し拒否し、自前で開発した約10年の歴史を持つデータ基盤を継続利用する方針を表明している。
英国政府は2023年、NHS(国民保健サービス)向けに「連邦データプラットフォーム(FDP)」を開発するPalantirとの契約を締結した。契約総額は4億ドル超で、2031年まで継続される予定だが、2026年2月に早期終了の選択肢がある。FDPは2024年初頭に展開が始まり、国全体の医療データを集約・整理する国家レベルのデータプールと、各地域が独自のニーズに応じた分析・ツール開発を行うためのローカルデータベースで構成される。NHSとPalantirは、同プラットフォームが待機時間の短縮や入院日数の削減、手術室の有効活用に既に貢献していると説明している。
一方、イングランドのグレーター・マンチェスター地区のNHS医療委員会は、FDPの採用を繰り返し拒否してきた。同地区のNHSチーフデータ・アナリティクス責任者のMatt Hennesseyは、「臨床医、データ管理者、患者、一般市民の信頼を得られなければ、技術的に優れたプラットフォームも価値を発揮できない」とWIREDに述べ、FDPを全面採用することは「後退」になると主張している。同地区は約10年かけて独自のデータ基盤を構築しており、機能面でも信頼面でも自前システムが優れていると主장する。
Palantirをめぐる批判は技術面だけにとどまらない。同社の技術が戦争や米国の移民取り締まり政策に活用されていることが英国内で抗議運動や国会での調査、NHS職員の反発を招いている。また、トランプ政権との関係が悪化する欧州各国も、米国製技術への依存を減らすためPalantirとの関係を見直しつつある。NHSでは従来、デジタルシステム、表計算ソフト、紙、ホワイトボードを組み合わせて患者管理が行われており、患者が異なる医療機関に移る際に治療記録が引き継がれず、時に致命的な事態が生じていた。FDPはこの問題の解決策として期待されている。