英国トップ判事「AI裁判も検討すべき」

原題: Should AI Decide Your Court Case? This Judge Says Yes

なぜ重要か

司法へのAI導入は公正性・透明性・コスト削減の観点で法律テック市場の拡大に直結する重要な政策論点だ。

英国民事司法の最高位職であるMaster of the RollsのGeoffrey Vos判事が、2026年10月にWIREDのインタビューに応じ、人身傷害や少額の専門家過失訴訟などの民事事件はAIが裁定できると主張した。退任直前の同判事は、中国・深圳の法廷でAI支援による裁判を視察し、その可能性に確信を持ったという。

Geoffrey Vos判事は数日後にMaster of the Rollsを退任する。英国民事司法トップとしての最後の行動のひとつとして、裁判官によるAI活用を巡る議論を活性化しようとしている。

現行のガイドラインでは、英国の裁判官がAIを使えるのは行政的な業務に限られている。Vos自身はMicrosoft Copilotを文書検索や大量テキストの要約に日常的に使っているものの、判決文の作成には使っていないと明かした。

転機となったのは中国・深圳の法廷の視察だ。そこではすでに民事紛争をAIが大幅に支援する形で裁定している。この経験をもとに、Vos判事は世界の裁判所も同様のアプローチを検討すべきだと訴える。人身傷害請求や少額の専門家過失案件はAIが裁定可能で、複雑な商事紛争や繊細な家事事件には人間の裁判官が必要だと線引きする。

一方、課題も山積みだ。複数の弁護士がAIに「幻覚(ハルシネーション)」された判例を引用して問題になった事例が相次いでおり、英国では弁護士がAIの誤用を理由に資格を一部失う初のケースも発生した。さらに、チャットボットを法律顧問代わりにした当事者が大量の訴訟を起こし、裁判所が根拠の薄い請求で溢れる事態にもなっている。

こうしたリスクを認識しつつも、Vos判事は楽観的な姿勢を崩さない。「民事紛争で人々が切に求めているのは解決だ。問題はどこに線を引くかだ」と語る。

判事は「法律家は小文字の保守派だ」とも述べ、変化を慎重に、目を開けて採り入れるべきだと強調した。AIの波は法律だけでなく、プログラマー、サイバーセキュリティ専門家、数学研究者など幅広い職種にも押し寄せており、ルールが急速に変わっていると指摘している。

出典

wired.com — 元記事を読む →