インターネット経路の70%をRPKIが保護
原題: RPKI now protects 70% of internet routes
なぜ重要か
BGP経路ハイジャック対策の普及は、金融・通信・クラウドインフラの信頼性に直結し、インターネット全体のセキュリティ水準を左右する指標として注目される。
IPinfo.ioが2026年9月のデータに基づき公表した分析によると、RPKI(Resource Public Key Infrastructure)によって保護されるインターネット経路の割合が、2025年9月の54.0%から2026年9月には70.3%へと16.4ポイント上昇した。前2年間の合計増加幅(7.1ポイント)を大幅に超えるペースで、特に中国での急拡大が全体の約60%を占めた。
インターネットの経路制御を担うBGP(Border Gateway Protocol)は、長らく「信頼」に依存してきた。悪意ある、あるいは誤った経路アナウンスが拡散すると、トラフィックが意図しない場所へ誘導される。2008年2月にはパキスタン通信(AS17557)がYouTubeのIPアドレスブロックを誤って世界に広告し、約2時間にわたってYouTubeへのアクセスが世界規模で遮断される事態が起きた。
RPKIはこうした問題への対策として設計された仕組みだ。IPアドレスブロックの保有者が「Route Origin Authorization(ROA)」と呼ばれる署名付き記録を公開し、そのアドレスを正当にアナウンスできるネットワーク(AS)を明示する。対応するルーターはこの記録と照合し、不正なアナウンスを拒否できる。
IPinfo.ioが2026年9月28日時点のデータをまとめたところ、RPKI有効な経路(プレフィックス)の割合は70.3%に達した。2025年9月の54.0%から1年で16.4ポイント増加し、その前2年間の累計増加幅(2024年が3.9ポイント、2023年が3.2ポイント)を合計した7.1ポイントを大きく上回る。
今回の急伸を牽引したのは中国だ。中国のIPv4アドレスにおけるRPKI有効率はわずか3.7%から83.0%へと跳ね上がり、アドレス数ベースの世界増加分の約60%を占めた。
効果も数字に表れている。RIPE RISおよびRouteViewsの収集装置に接続するルーター1,614,288経路を分析すると、RPKI有効な経路は中央値で596拠点から観測される。RPKI記録のない経路も595拠点とほぼ同数だが、RPKI無効な経路はわずか2拠点にしか伝播しない。無効経路の約半数は1拠点にしか届かず、明確なハイジャックや誤設定に由来する無効経路に至っては71%が1拠点のみの観測にとどまる。
Internet Society Pulseの2026年8月のデータによれば、RPKI関連のBGP更新トラフィックは全体の1%未満であり、RPKIの普及自体が経路制御を不安定化させているわけではないという。
なお、スペインは無効IPv4プレフィックスの比率が28.2%と最高水準にあるが、実際の影響を正確に把握するには単純な件数ではなく、各経路が観測される拠点数で重み付けしたアドレス数ベースの評価が必要とされる。