数学者25人がOpenAIと公開書簡で対立激化
原題: OpenAI’s feud with mathematicians is only escalating
なぜ重要か
AI企業が数学という「知的インフラ」に踏み込んだことで、帰属・検証・オープンサイエンスという研究文化全体の問題が顕在化した。
Fields Medal受賞者25人が2026年9月、AIラボが数学的業績を脅かしているとして公開書簡に署名した。NYU教授Tristan Buckmasterは同週、OpenAIがAnthropicの研究者への謝辞を削除するよう圧力をかけたと告発。OpenAIはCalTechでの数学イベントのスポンサーを撤退し、同社が発表した数学的証明はいまだ未検証のまま残っている。
Fields Medalという数学界最高の栄誉を持つ25人が署名した公開書簡が、OpenAIとの対立をさらに深めている。書簡はAIラボが著名な数学的未解決問題を競うように解こうとする行為が、数学コミュニティの知的営みを損なっていると訴えている。
発端のひとつは、NYU教授Tristan Buckmasterによる告発だ。OpenAIが重要な数学的証明の共同研究者——Anthropicの研究者——をクレジットしないよう圧力をかけたと主張した。さらに、OpenAIが自社のCodexを使って「マラソン的な週末の推論」によりOpenAI自身の画期的な証明を生成した際、自分たちの研究を無断で活用したのではないかとの疑念も示した。OpenAIはその後、CalTechでの数学イベントのスポンサーシップを撤回した。スポンサー撤退は同大学の研究者からの批判を受けてのことだった。
書簡の署名者たちは、AIが数学的課題を解くこと自体を否定していない。問題は「解が急いで発表され、新手法の整理も、他者の先行研究への引用も、正式な論文化もなされないこと」にあると指摘する。帰属・剽窃の問題を生じさせるだけでなく、数学者間の「人間的な知識伝達の連鎖」が失われると警告している。OpenAIが発表した証明は現時点でも未検証だ。
Codexを利用していた数学者たちの間には、自分の研究がOpenAIの新モデルの学習に使われたのではという疑心暗鬼も広がっている。フロンティアラボが数千万ドルをかけてLLMを動かし、元の研究者より先に証明を完成させられるなら、研究者はオープンな共有をやめて秘密主義に転じるインセンティブを持つことになる。
この書簡に先立ち、6月には数学者のワーキンググループによる「Leiden Declaration」も発表されている。同文書もLLMによる証明が数学者の仕事を変えることを論じ、数学者・機関・政策立案者向けの提言をまとめていた。