ASCII密輸技術、スパマーがフィルター回避に悪用

原題: Once popular for attacking AI, ASCII smuggling is embraced by spammers

なぜ重要か

AI攻撃手法がスパム分野に転用された事例であり、LLM普及に伴うセキュリティ脅威の拡大を示す重要事例として業界全体の対策強化が急務となっている。

Microsoftは2026年9月、AIへの攻撃手法として知られる「ASCII密輸(ASCII Smuggling)」技術をスパマーが迷惑メールフィルター回避に転用していると報告した。Microsoft Defender for Officeが検出した同シグネチャは2月初旬の1日約2万1,000件から4日間で250万件超に急増し、5月中旬まで大量検出が継続した。

Microsoftは2026年9月4日、Unicode「タグ文字」ブロックを使ったスパムキャンペーンの急増を公式に報告した。

「ASCII密輸」とは、Unicodeのタグ文字(U+E0041〜など)を使って人間には見えないが機械には認識可能な文字列を埋め込む技術だ。この128文字のブロックはASCIIをほぼ完全に模倣しているが、設計上ほとんど人目に触れない。もともと約2年前にLLM(大規模言語モデル)へのプロンプトインジェクション攻撃を隠蔽する手法として注目を集めた。

今回スパマーが利用した仕組みは以下の通りだ。「funding」という単語の途中に不可視のタグ文字を挿入することで、フィルターには「fun」と「ding」という別々の文字列として読み取らせる一方、受信者の画面には「funding」と正常に表示される。「credit」「term」「ドル金額」など金融スパムに頻出するキーワードを同様に分断し、検出を回避する。

Microsoft Defender for Officeのシグネチャ検出数は2026年2月上旬のある1日に約2万1,000件から1日で130万件超へ急増し、さらに4日以内に250万件を超えた。その後数ヶ月にわたって高水準が続き、5月中旬に急落した。特に金融系送信ドメインから発信されるメールで顕著な増加が観測された。

Microsoftは「タグ文字が人間には不可視だがテキスト処理レベルでは存在するという性質は、AIへの命令を密輸する際と、フィルターがキーワードを評価する前に難読化する際で全く同一のメカニズムであり、意図だけが逆転している」と説明した。また受信者側の不審感も高まらないため、二重の意味で検出が困難だとしている。

ゼロ幅スペースや改行なしスペースを使ったスパム回避手法は以前から存在したが、Unicode タグ文字ブロックの大規模活用は新たな段階を示している。

出典

arstechnica.com — 元記事を読む →