AI「Mythos」がPQC候補アルゴリズムHAWKの致命的欠陥を発見

原題: Mythos attack on 3rd-round PQC algorithm candidate puts it out of commission

なぜ重要か

AIが専門家でも見逃した耐量子暗号の欠陥を発見したことで、暗号解析へのAI活用が標準化審査プロセスに影響を与える時代の到来を示す重要な事例となる。

AnthropicのAIセキュリティモデル「Mythos」が、NISTの耐量子暗号標準化審査の第3ラウンドに残っていたデジタル署名方式「HAWK」の致命的欠陥を発見した。約60時間・約10万ドルの計算コストで既知の最良攻撃を改良し鍵強度を実質半減させた結果、HAWK開発者は2026年7月29日に審査からの撤退を表明した。

Anthropicが開発したAIセキュリティモデル「Mythos」が、量子コンピューター耐性を持つデジタル署名方式「HAWK」に重大な弱点を発見し、同アルゴリズムが米国標準化候補から脱落する事態となった。

HAWKはNIST(米国立標準技術研究所)のPQC(耐量子暗号)標準化プロセスにおいて2ラウンドの審査を通過し、第3ラウンドに進んでいたアルゴリズムである。その安全性は「格子同型問題(Lattice Isomorphism Problem)」の数学的困難性に依拠しており、現在広く使われるデジタル署名方式と異なり、量子コンピューターによる攻撃に耐えられると考えられていた。

Anthropicの発表によると、暗号学の専門知識を持たない研究者がMythosを操作し、約60時間・約10万ドルの計算コストでHAWKに対する既知の最良攻撃手法を改良することに成功した。この改良により、HAWKの実効的な鍵強度が実質的に半減した。Anthropicが月曜日に結果を公表した翌日、HAWKの開発者は同アルゴリズムの審査撤退を発表した。

MythosはHAWKのほか、広く使われているAES暗号の数学的基盤となる問題についても弱点を発見したとAnthropicは報告している。

ただし、いくつかの留意点がある。今回の成果はいずれも段階的なものであり、現在実際に運用されている暗号システムを直ちに破るものではない。テスト対象となったのは、仕様書の作成者が敵対的なピアレビュー向けに提供した「弱体化されたチャレンジインスタンス」であり、実際の本番環境で使われるシステムはより強固である。また、両攻撃とも実際の運用環境での実施は現実的に困難とされる。Mythosは現在、信頼できる限定的なユーザーにのみ提供されている。

Anthropicは今回の成果を大きく取り上げているが、業界関係者の間ではマーケティング的な側面も指摘されており、客観的な評価が求められる。

出典

arstechnica.com — 元記事を読む →