数学者がAIの急速な進歩に「恐怖」を告白

原題: ‘I’m Really Terrified’: A Mathematician Grapples With AI’s Recent Breakthroughs

なぜ重要か

AIが数学の最前線を塗り替えることで、専門家の役割や研究クレジットのあり方など、学術界全体の構造問題が一気に顕在化している。

Cornell大学の数学者Steven StrogatzがWIREDのインタビューで、AI駆動の数学的ブレークスルーが相次ぐ2026年の状況に「本当に怖い」と語った。OpenAIが90年来の未解決問題を数万のAIエージェントで解いたと発表、Anthropicの「Claude」はFermatの最終定理の形式化で2万9500の補題を証明。AIが数学の最前線を塗り替える速度が、専門家の職業的アイデンティティを直撃している。

2026年9月、数学者でありコーネル大学教授のSteven StrogatzはWIREDとのインタビューで、AIが引き起こす数学界の激変について語りながら涙を見せた。「科学としては胸躍るものがある。でも、それに伴う人間的な不快さも相当なものだ」と述べた。

今週の主な出来事として、OpenAIは数万のAIエージェントを動員して賞金100万ドルが懸かっていた90年来の数学問題を解いたと発表した。解法はスペイン人数学者Diego CórdobaとLuis Martínez-Zoroa両名の戦略を基盤としているが、独立した検証はまだ完了していない。さらに別の数学者Tristan Buckhamsterは、Anthropic研究者のLevent Alpögeと共に取り組んでいた自身の研究をOpenAIが察知し、先行して成果を発表したと主張。クレジット配分への介入疑惑も浮上し、研究コミュニティに亀裂が走った。

Anthropicもこの動きに対抗するように、自社のAI「Claude」がFermatの最終定理の既存証明を形式化する過程で2万9500の小定理を証明したと先週発表。OpenAIも8月には長年未解決の10の数学問題で前進したと公表している。

Strogatzは共著者のAlex Townsendと、数学が人間の理解を超えつつあることをテーマにした書籍『Big Math』を2026年11月に刊行予定だ。Townsend自身もChatGPTを使って数十年来の数値線形代数の問題を解くなど、AIを研究加速に活用している。しかし同時に「15年間を数学研究に捧げ、今まさにキャリアの絶頂期にいるのに、その最高の技術をAIが超えてしまった」と打ち明けた。「以前は世界トップクラスとして知の最前線を切り開く興奮があった。今は自分がAIエージェントを持つ人間になっている。それは全く違う感覚で、本当に脅威を感じている」とも述べた。

Strogatzは「2026年は数学にとってannus mirabilis(奇跡の年)にもannus horribilis(最悪の年)にもなりうる」と指摘。「将来、ブレークスルーを目指すならAIなしには戦えない」と断言した。

出典

wired.com — 元記事を読む →