1971年生まれのSNS「Finger」は今も現役
原題: Finger: the 1971 social network that never died
なぜ重要か
中央集権型SNSへの反動が高まる中、Fingerは分散・脱アルゴリズム型情報共有の原型として再評価される可能性を持つ。
1971年にStanford人工知能研究所のエンジニアLes Earnestが開発したネットワークプロトコル「Finger」は、50年以上を経た現在も動作している。アカウント不要・中央サーバー不要で、プレーンテキストファイル1つでプロフィールを管理できる仕組みであり、macOSや多くのUnixシステムには標準クライアントが同梱されている。
1971年、Stanford人工知能研究所(SAIL)では研究者たちがWAITSタイムシェアリングシステムを共用していた。同僚が接続中かどうかを確認するには「WHO」コマンドを使うしかなかったが、出力は読みにくい一覧表示で不便だった。エンジニアのLes Earnestは、研究者たちがスクリーン上のリストを指でなぞりながら同僚の在席を確認する光景を日常的に目にし、人間が読めるフォーマットで在席状況・場所・端末のアイドル時間を返すプログラムを開発した。これが「Finger」の起源であり、名称も指でスクリーンをなぞる動作に由来する。
プロトコルは1977年にRFC 742として正式化され、1991年にはRFC 1288として決定版の仕様がまとめられた。Fingerはユーザーのホームディレクトリにある「.plan」と「.project」という2つのテキストファイルの内容も表示する機能を持ち、作業内容や予定を公開する「静的なステータス」として機能した。利用者はやがてこのファイルに詩・日記・ASCIIアート・記事などを書き込み始め、インターネット最初のマイクロブログとも評されるようになった。
最も有名な活用例は、id SoftwareのJohn Carmackによるものだ。「Doom」や「Quake」の開発期間中、Carmackは「finger johnc@idsoftware.com」で誰でも読める開発日誌として.planファイルを活用していた。
Finger自体は現在も動作しており、macOS・Linux・Windowsには標準クライアントが搭載されている。Debian/Ubuntuでは「apt install finger」で導入可能で、「finger random@happynetbox.com」のように実行するとアクティブなアカウントをランダムに閲覧できる。IndieWebやGeminiといった脱中央集権的なウェブ運動とともに、再注目される可能性もある。