EU議会、チャット監視法案を可決——反対多数も否決に届かず
原題: A Majority of European Lawmakers Voted Against Letting Big Tech Read Our Messages. They’re Going to Anyway
なぜ重要か
EU市民のプライバシー権とCSAM対策の均衡を巡る立法の行方は、グローバルなメッセージングサービスの設計・規制に直接影響を与える重要な先例となる。
欧州議会は2026年7月9日、「Chat Control」と呼ばれる法案を可決した。Meta・Google・Microsoftなどの企業が、ユーザーの私的なテキスト・メール・SNSメッセージを児童性的虐待素材(CSAM)検出目的でスキャンすることを2028年まで認める内容。反対票が賛成票を上回ったが、否決に必要な絶対多数361票に47票届かなかった。
欧州議会は2026年7月9日、テック企業がユーザーの私的メッセージをスキャンすることを認める暫定法案を可決した。通称「Chat Control」と呼ばれるこの法案は、WhatsAppやSignalなどのエンドツーエンド暗号化チャットを対象外としつつ、Meta・Google・Microsoftなどが一般的なテキスト、メール、SNSメッセージを児童性的虐待素材(CSAM)の検出目的でスキャンする権限を2028年まで延長するものだ。
採決では、反対票が賛成票を上回ったものの、法案を否決するために必要な議員の絶対多数361票に対し47票及ばず、可決が成立した。欧州議会最大会派である欧州人民党(EPP)は、前回の暫定法が2026年4月に失効して以降、早急な再立法を推進。夏季休会前に法的空白を埋めるべく、委員会審議を省略できる「緊急手続き」を活用し、今週内の採決を強行した。EPP副議長のTomas Tobéは「子どもたちが保護されないまま夏季休会に入るわけにはいかない」と議会で訴えた。
一方、ブリュッセルに拠点を置くデジタル権利擁護団体European Digital RightsのポリシーアドバイザーSimeon de Brouwerは「民間企業が市民の機密デジタル会話の権利を否定できることになる。書くメッセージ、送るメール、共有する写真すべてを読む可能性がある」とWIREDに語った。
元欧州議会議員で市民権活動家のPatrick Breyerは今回の採決を「民主主義を損なう茶番」と非難。「疑いのない大規模監視で子どもを守ろうとするのは、蛇口を開けたまま床を拭き続けるようなものだ」とブログで批判した。
今後は2028年まで現行の暫定措置が継続される一方、恒久的な「Chat Control」立法に向けた議論も並行して進められる。