「私」と言えるのは人間だけ?チャットボット規制論

原題: Maybe Chatbots Shouldn’t Get to Say ‘I’ or ‘Me’

なぜ重要か

AI企業がユーザーとの「関係性」を収益化する中、社会科学の視点からの系統的な批判は規制議論に直接影響する可能性がある。

MIT教授Sherry Turkleは2026年10月16日、新著『Artificial Intimacy: Who We Become When We Talk to Machines』を発表した。同書はチャットボットへの過依存が人間性を脅かすと警告し、AIが一人称(「I」「Me」)を使うことを禁止すべきと主張。パンデミック期を含む多数のインタビューを根拠に、チャットボットとの関係が現実の人間関係を代替しつつある実態を告発する。

40年以上にわたり人間とコンピュータの相互作用を研究してきたTurkleは、これまで慎重な社会科学者として知られてきた。しかし新著では一転して「緊急事態」を宣言し、Rachel CarsonのSilent SpringやRalph NaderのUnsafe at Any Speedに並ぶ社会的警鐘を鳴らすことを目指している。

WIREDのSteven Levyとのインタビューで、Turkleはパンデミック中のフィールドワークが書き方を変えたと明かした。「家族が苦しんでいる最中に、人々はチャットボットと過ごしたいと語っていた」と述べ、人々が現実の人間関係より、AIとの交流を優先し始めている実態に強い危機感を示した。

同教授がとりわけ問題視するのは、チャットボットが一人称を使うことだ。「一人称を使う必要は本来ない」と断言し、禁止すべきとの立場を明確にした。LLMが提供する「全面的な受容という温かいスープ」の中に浸かっていると、チャットボットとの対話が目的そのものになってしまうと指摘。「練習のためにチャットボットを使う」という神話が広まっているが、実際には現実の人間関係への回帰が起きていないと批判した。

職場での活用についても問題提起している。「Human in the loop」という表現に強い反感を示し、「その言葉は人間がすでに生産プロセスから外され、AIの誤りを拾う後処理係に成り下がっていることを意味する」と言い切った。企業が配置する「ループ内の人間」はわずかで、実質的に何も変えられない状況だと指摘した。

さらにSNSがこの状況を下地づくりしたとも論じている。SNSは「気分が落ち込んだらパソコンを開く」という習慣を定着させ、次のステップとしてチャットボットへの感情的依存を促したという見立てだ。精神科医療の代替としてチャットボットを使う動きにも警鐘を鳴らし、「セラピーをAIで済ませようという発想は危険だ」と述べた。

出典

wired.com — 元記事を読む →