数学者はAIを嫌いつつ使い続ける

原題: Mathematicians Hate AI. They Can’t Quit It

なぜ重要か

AI企業が数学の難問を次々と攻略する中、学術貢献の帰属と学習データの透明性が研究倫理上の焦点になりつつある。

数学者Tristan BuckmasterはOpenAIが自身の研究を無断利用してNavier-Stokes問題(賞金100万ドル)を先に解いたと主張しているが、同社のCodexを今も使い続けている。同様の不満を抱えながらAIを手放せない数学者は他にも複数おり、AIが数学研究の在り方を根本から揺るがしている実態が浮かぶ。

ニューヨーク大学教授のTristan Buckmasterは、OpenAIが自身のCodexプロンプトを参照してNavier-Stokes存在・平滑性問題を解いた可能性を公に指摘した。同問題には100万ドルの賞金が懸かっており、Buckmasterはその解決に向けてAnthropicのClaudeやCodexを使いながら研究を進めていた。OpenAIは調査を実施し、「Buckmasterの2ヶ月分のCodexプロンプトがシステムに影響を与えた事実は確認されなかった」と発表を修正した上でWIREDへのコメントでも同社声明を参照するよう回答した。

しかし批判の当事者であるBuckmasterは、その後もCodexを使い論文の整理を続けている。「たとえ同意できない部分があっても、使わざるを得ない状況に追い込まれている。これらの企業は事実上独占状態にあり、選択肢がない」と彼は語る。

ドイツの数学者Andreas Thomも似た経緯を経験した。Thomが20年かけて開発してきた幾何学的群論の手法を用いて、OpenAIのAstraモデルが未解決問題を証明したと8月に発表された。Thomは「驚いたと同時に、どこでその手法を知ったのかと疑問に思った」と述べ、OpenAIの研究者Mark SellkeとSébastien Bubeckに照会した。OpenAIのプレスリリースには「過去10年で進展なし」と記されていたが、Thomは2019年に自身が書いた論文や他の数学者の業績が見落とされていると指摘し、会社は発表を修正した。ChatGPTを使ってその問題に取り組んでいたThomが、会話が学習データに含まれていないか尋ねたところ、Sellkeからは「そのようなことはない」と回答があったという。

AIが数学の可能性を押し広げていることを示した点には意義があるとしながらも、Buckmasterは「IPO前に人間の功績を十分に評価せずに解を発表することは無責任で幼稚だ」と批判する。

出典

wired.com — 元記事を読む →