コーディングが解決されたのにソフトウェアの品質が低下し続ける理由
原題: If coding has been solved, why does software keep getting worse?
なぜ重要か
AIツール普及後もソフトウェア品質が低下し続けるという指摘は、開発組織のKPI設計や品質管理戦略の見直しを業界全体に促す重要な問題提起となっている。
AIツールの普及により開発生産性が向上したとされる一方、バンキングアプリのFaceID障害、Slackのフォーカス奪取バグ、車載インフォテインメントの再起動問題など、実際のソフトウェア品質は広範に低下している。KPI重視の開発文化が品質改善より新機能追加を優先させているという指摘がエンジニアリングブログで公開された。
AIモデルの進化とエージェント型開発ツールの普及により、ソフトウェア開発の生産性向上が謳われている。LLMはバグ修正においても高い能力を発揮できるとされ、開発チームの平均的なスキルセットを底上げしたとも言われる。しかし、同ブログ記事の著者は、現実のソフトウェア体験は改善どころか悪化しているとして複数の具体例を挙げた。
直近1週間の事例として、銀行アプリで3D Secure認証画面が表示されるまでに平均3回のFaceIDログインが必要になること、macOS上のSlackがアクティブウィンドウのフォーカスを突然奪い、別アプリで入力中のコマンドがグループチャットに誤送信されたこと、LG冷蔵庫の保証申請フォームが最終ステップでJavaScriptコンソールにしかエラーを表示せずに失敗すること、そして車載インフォテインメントのソフトウェア更新後にウインカー音の消失・アプリ誤起動・1〜2秒の操作遅延といった安全運転に影響するバグが発生していることを報告した。
著者はこれらの問題の根本原因として、ソフトウェアベンダーがKPI重視の姿勢をとっており、安定性向上は数字に直結しないため優先されにくいという構造的な問題を指摘する。新機能追加やUIリデザインはプレゼンテーションで映えるが、「今四半期はバグ修正のみに集中する」という方針は経営層に評価されにくい。AIの進化によって開発者は強力なツールを手にしたものの、それをソフトウェアの品質向上に活用する文化的・組織的な変化が伴っていないと結論づけている。