ノーベル賞科学者、AIで自然界にない分子を設計

原題: He Won the Nobel Prize for Protein Design. Now He Uses AI to Create Molecules Not Found in Nature

なぜ重要か

自然進化の外側にある分子空間をAIで探索する手法が確立されれば、創薬・素材・環境対策の開発速度が根本的に変わりうる。

2024年ノーベル化学賞受賞者のDavid Bakerが率いる「AI BioDesign」は、Allen InstituteやUniversity of Washington、Fred Hutchinson Cancer Centerが連携し、自然界に存在しないが物理・化学的に可能な分子や生物機能をAIと大規模実験で設計・検証するプロジェクトだ。がんや神経変性疾患の新薬、海洋プラスチックを分解する酵素などへの応用を目指す。

AIと大規模な実験室実験を組み合わせた科学プロジェクト「AI BioDesign」が始動した。率いるのは、計算によるタンパク質設計の研究で2024年ノーベル化学賞を共同受賞したDavid Bakerだ。BakerはAI BioDesignの最高科学責任者を務め、シアトルの生命医学研究非営利組織Allen InstituteをはじめUniversity of WashingtonおよびFred Hutchinson Cancer Centerと連携している。

このプロジェクトの核心にあるのは、「自然界は物理・化学的に可能なことのごく一部しか試みていない」という発想だ。数十億年の進化が生み出した分子だけを研究対象とする従来の生物学とは根本的に異なるアプローチで、AIを活用して自然が「選ばなかった」タンパク質や機能を設計・構築する。生成されたデータベース、モデル、ツールは将来の医薬品・技術開発の「種」となることを意図している。具体的な応用例として、がんや神経変性疾患の治療薬、海洋中のプラスチックを分解できる酵素が挙げられている。

WIRED en EspañolのインタビューでBakerは、全く新しい生物学的領域に踏み込むリスクについても言及した。「主なリスクは新しい生物技術に共通するもの——生体系との意図しない相互作用、予期せぬ環境への影響、悪用——と大きく変わらない」と述べた上で、「今日の優位点は、計算設計によって分子を実際に合成する前に多くのリスクを評価できることだ。設計を計算的にスクリーニングし、広範にテストできる」と語った。

関係者の一人は、この手法の潜在的な意義を産業革命、電化、デジタル革命といった歴史的変革に匹敵すると表現している。自然の制約を超えた生物設計がどこまで実現できるか、科学と社会の両面から注目が集まる。

出典

wired.com — 元記事を読む →