FBI・沿岸警備隊がハッキングされた石油タンカーに乗船
原題: FBI, Coast Guard boarded hacked oil tankers heading towards US coast
なぜ重要か
エネルギー輸送インフラへのサイバー攻撃が現実化しており、海運セキュリティへの投資・規制強化の議論が世界的に加速する契機となる。
米FBIと沿岸警備隊は2026年8月21〜24日、ハッカーに船内ネットワークを侵害されたとみられる石油タンカー2隻にメキシコ湾で乗り込んだ。うち1隻はエジプトから米国へ航行中の全長333メートル・積載量200万バレル超の「VL Prosperity」と特定されており、航行・推進・貨物システムが制御された可能性がある。イランの関与を米当局が調査している。
米沿岸警備隊とFBIは共同声明をTechCrunchに提供し、「両船のネットワークが侵害された兆候を受け、航行・ITシステムの健全性確保のため乗船した」と説明した。乗船時に船長・乗組員・船主の陸上スタッフは当局に全面協力したという。声明は「運航停止・船体不安定・乗組員への身体的危険・環境への影響は報告されていない」とも述べている。
CBSニュースは、タンカーの1隻が「VL Prosperity」であると確認。同船は8月7日にエジプト発で米国へ向かう途中に侵害され、速度や燃料システムへの干渉が発生。さらに24時間以上にわたって通信が途絶したとされる。航跡情報サービスのVesselFinderによると、同船は現在もメキシコ湾に位置している。
攻撃者の特定には至っていないが、CBSはイランメディアを引用しつつ、米国がイランの関与を調査中と報じた。背景として、2026年2月に米国とイスラエルが主導した軍事作戦でイランの最高指導者が死亡して以降、イラン系ハッカーの活動が激化している。医療機器メーカーStrykerへの破壊的攻撃、ロサンゼルスの公共交通システムへのハッキング、米国内100か所以上の水道施設への侵害がすでに報告されており、CISAはこれらを「日和見的」な攻撃と位置づけている。
今回の事案は、グローバルな物流インフラがサイバー攻撃の標的になりうることを改めて示した。石油タンカーは航行・貨物管理・船内インフラを支える複雑なネットワークを船全体に張り巡らせており、攻撃面が広い。乗船した船の名称について沿岸警備隊の広報は取材に応じていない。