「コーディング問題解決済み」論への反論

原題: Coding Is Not Solved

なぜ重要か

AIコーディングツールへの投資と期待が急拡大する中、本番運用レベルの品質保証やNFR対応がいまだ人間の判断に依存するという現実は、エンジニアリング組織の意思決定に直接影響する。

ソフトウェアエンジニアのAlex Ewerlöf氏が2026年9月26日に公開したブログ記事で、「LLMがコーディングを解決した」という主張を真っ向から否定した。同氏はハードウェア・システム工学の学位を持ち、過去4年間にわたりAI活用と構築の両面に携わってきた経験をもとに、保守性・信頼性・セキュリティ・スケーラビリティといった非機能要件(NFR)がいまだ未解決であることを具体的に論じている。

Ewerlöf氏の主張の核心は、「コード生成のコストが下がっても、本番環境で大規模に運用するソフトウェアのコストの大半は保守・信頼性・セキュリティ・スケーラビリティにある」という点だ。これらは非機能要件(NFR)と総称され、LLMが「それなりのコードを書ける」という言説はこの現実を無視していると指摘する。

同氏はコードを読まなくても成立するソフトウェアの用途を3つに限定した。個人的な自動化やDIY用途、技術的実現可能性を示すPoC(概念実証)、そして意図的にリスクを許容する「兵器化されたAI」だ。一方、エンジニアを雇って開発・運用する医療、金融、航空、自動車、電力インフラなどのソフトウェアは低いリスク許容度を持つ。こうした領域ではミスが人命・金銭・法的責任に直結するため、説明責任(accountability)が必要になるが、AIはその責任を負えないと論じる。

コーディングが「解決済み」でない技術的な理由としては、コンパイルエラーや実行時エラーのフィードバックループでLLMが「誤りを隠す」形で繰り返し修正している点を挙げた。LLMが自然言語タスク(SNS投稿やレポート作成など)で通用するのは、出力の論理的正しさを問わないためであり、コードはその性質上、論理的な厳密さから逃れられないと説明する。

AnthropicのClaude Codeが誤って公開され、後に多数の欠陥が発見された事例や、同社のステータスページが常時障害表示を示している点も具体例として引用。「コーディング解決済み」論を最も強く主張する層が、実際に本番運用するものを持っていないとも指摘している。なおこの記事はHacker Newsにも掲載された。

出典

blog.alexewerlof.com — 元記事を読む →