Playdate向け自作3Dレンダラー開発記
原題: Building a Tiny 3D Renderer for a Tiny Handheld
なぜ重要か
低スペックデバイス向けのソフトウェアレンダリング技術の知見は、リソース制約下での3Dグラフィックス開発の参考事例として業界的価値がある。
ゲーム開発者のCristina Ramosが、携帯ゲーム機「Playdate」向けに3Dソフトウェアレンダラーをゼロから開発した過程を公開した。Playdateは1ビットディスプレイと低解像度スクリーンを持つ非力なデバイスで、3D描画ハードウェアを一切持たないため、すべての処理をCPUのみで実現しなければならないという制約のなかで開発が進められた。
Cristina Ramosは、Playdate向けの3Dソフトウェアレンダラー開発の経緯をitch.ioのDevlogで詳細に公開した。
開発の第一歩として、Ramosはパフォーマンスの基準値を把握するためにレイキャスターを実装した。このレイキャスターは、低消費電力デバイスの3D処理能力とスクリーン描画速度を評価する指標として機能し、浮動小数点演算・ベクトル演算速度、メモリ操作速度、フレームバッファのセットアップなど3Dレンダリングに重要な要素を測定できる。
初期テストの結果は予想を下回るものだった。Playdateの性能は、3dfx Voodooのような初期の3Dアクセラレーターや初代PlayStationには及ばないことが判明した。一方で、Playdateが持つ小型・低解像度の1ビットディスプレイはメモリ消費量を大幅に削減できる利点があり、3DOやSega Saturn時代のゲームに近い視覚的な結果をプレイヤーに提供できる可能性があるとRamosは判断した。
RamosはPlaydateと3DO・Saturnの技術的な差異についても言及している。3DOとSaturnはポリゴン(クワッド)描画専用のカスタムハードウェアを備えており、CPUは比較的安価なものを採用していた。一方Playdateには3Dハードウェアが存在しないため、ポリゴンのソーティング、ラスタライゼーション、デプスバッファ、ビューフラスタムに対するクリッピング、テクスチャマッピングなど、3Dグラフィックスに必要なすべての処理をCPUのみで実装しなければならない。
Devlogはさらに、3次元の世界を2次元スクリーンに投影するための基礎理論の解説も含んでおり、開発の技術的背景を丁寧に説明している。