AI企業が社内文書やメールを高額で買い漁る

原題: AI Companies Really, Really Want to Buy Your Work Files and Emails

なぜ重要か

公開データ枯渇という構造的制約を背景に、企業内部の業務データが次のAI学習資源として本格的な商品化段階に入りつつある。

AI企業向けにデータブローカーが企業の業務ファイルやメール、Slackメッセージなどを買い集めるビジネスが急拡大している。Handshake、Micro1、Mercorなどの新興企業が主導し、AIラボへのデータ販売で数百万ドル規模の取引が行われている。MercorのCEO Brendan Foodyは市場がさらに爆発的に拡大すると述べており、業界が「公開データの枯渇」に直面していることが背景にある。

WIRED編集部にも「AnthropicやOpenAIがWIREDのような媒体に過去の業務記録(文書・メール・Slackメッセージ・チケットなど)の提供対価として35万〜180万ドルの一時金を支払っている」という勧誘メールが届いた。別の送信者は「公開データは枯渇しており、AIラボは民間データに450億ドル以上を投じている」と主張し、上限を200万ドルに引き上げた内容で接触してきた。

こうした勧誘の主体はHandshake、Micro1、Mercorなど2020年代前半に設立されたデータ仲介スタートアップだ。Handshakeはフリーライターに1本の記事業務データとして1,000ドルを提示したことを認め、「大学院生の論文や課題も大量に購入している」と説明した。別の企業Sunsetは「スタートアップの清算支援」を名目にアプローチし、個人情報を匿名化した上でデータをラボに仲介すると説明している。

業界最大手とみられるMercorは2023年創業。2024年には20代前半の共同創業者3人が億万長者になったと報じられた。同社はもともとAI活用の採用支援事業として出発したが、大手ラボがデータ品質に不満を抱いていることを把握し、事業をデータ仲介へシフトさせた。CEO Foody氏はAI業界がより大量のデータを必要とするにつれ市場規模が劇的に拡大すると述べた。

AIラボ側の反応は慎重だ。Anthropicは「大きなデータ市場が存在する」ことは認めたが、WIREDのような稼働中の企業からワークフローデータを購入することはないと回答。OpenAIは掲載前に回答しなかった。

データ取引の対象は報道機関にとどまらず、法律・医療・金融など「実際の知識労働」が行われるあらゆる分野に及んでいる。個人の業務記録が本人の知らないうちに取引される可能性をはらむこのビジネスは、データセンター投資と同等かそれ以上の社会的影響をもたらすと指摘する業界関係者もいる。

出典

wired.com — 元記事を読む →