IBM・NASAが月面AIモデルを公開

原題: A rough guide for going back to the Moon

なぜ重要か

基盤モデルが地球・太陽に続き月面へ拡張され、宇宙探査向けAIの汎用化が加速している点で業界的に注目に値する。

IBMとNASAは2026年9月10日、月面探査を支援するマルチモーダルAIモデル「NASA-IBM Lunar Foundation Model」をオープンソースで公開した。米国・日本の複数ミッションが数十年にわたって収集したデータを統合し、クレーターマッピング・火山活動調査・極域の氷探索の3用途を優先的に支援する。Artemisプログラムによる月面長期滞在と将来の火星ミッションを見据えた取り組みだ。

IBMとNASAが共同開発した「NASA-IBM Lunar Foundation Model」は、月面を対象とした初のマルチモーダルAI基盤モデルだ。NASAのGRAILミッションが取得した20km/ピクセルの重力場データから、Lunar Reconnaissance Orbiter(LRO)が撮影した1m/ピクセルの高解像度画像まで、観測角度・空間スケールが異なる多種多様なデータを一つの表現に集約している。

モデルのアーキテクチャには、IBMと欧州宇宙機関(ESA)が共同開発した地球観測モデル「TerraMind」をベースにした手法を採用。異なるデータ型・解像度を統合し、欠損・ノイズのある値を補完するクロスモーダル相関学習を得意とする。同チームはすでに地球向けの「Prithvi EO」、太陽向けの「Surya」を開発しており、月面モデルはその系譜に連なる。

NASAが当面の優先用途として設定したのは3点。第一に、これまで目録化されていない小規模クレーターのマッピング。第二に、古代の溶岩流など月の火山活動史の解明。第三に、両極のクレーター内に存在するとみられる氷の探索だ。この氷は将来の宇宙飛行士に飲料水・酸素・燃料を供給できる資源として注目されている。

モデルが対処すべき技術的難題のひとつが月面特有の照明条件だ。月の「昼」は2週間の日照と2週間の暗闇が交互に訪れる。大気がほぼ存在しないため光が散乱されず、峰や谷は濃い影と強い反射光に覆われ、地形認識が著しく困難になる。さらに月面を覆うレゴリス(砂や岩の層)は太陽の角度によって視覚的な歪みを生じさせる。

IBM Research欧州(アイルランド・英国)のディレクター、Juan Bernabé-Moreno氏は「経験豊富な旅行者が出発前に土地勘をつかむように、科学コミュニティと次世代宇宙飛行士が宇宙へ向かう前に月面を把握できるよう支援したい」とコメントした。モデル本体・技術レポート・ベンチマーク用データセットはすべて公開されている。

出典

research.ibm.com — 元記事を読む →